ベルト着用サインが消えると、
眼下には一面の雲海が広がっていた。
夏至直前の6月の夕空は、午後8時を前に
雲の地平線が白夜みたいな光に染まる。
紀伊半島上空。
ぽん、と飛び降りたら、絶対弾むよな…。
そうとしか思えない密度の高い雲の隙間からは、
砂をまいたようにキラキラと、まばらな街灯りがこぼれて見える。
雲と山とに大事に守られているみたいな、光。
次第に雲が切れて、関東平野の賑やかな夜景が視界を埋めた。
上空から見るゴルフ場の照明は、
いつまで経っても直らない、タチの悪いかさぶたみたい。
沿岸の工場地帯は、そこだけぼうっと、明るく浮かび上がる島。
学生時代から何度も見てきた、
そして今回は随分久しぶりの、羽田上空の懐かしい光景。
風が強かったのか。
飛行機は大きく旋回して、
東京湾を行く船をギリギリにかすめて北側から滑走路に着陸し、
・・・到着口に着くとすぐに、手を振る旅の男の笑顔が見えた。
ここ数日のぎこちなさを、ほんの少し残したまま、
それでも、随分久しぶり!の筈なのに、
会った途端、これがずっと続いていた日常みたいな気がする、不思議。
彼の家がある築地から、晴海どおり沿いに10分も歩けば、もう銀座だ。
そのまま地下鉄に乗って、誘われるままに
赤坂の韓国料理屋さん、
『 一龍 』へ。
ゆっくり煮込まれた、白くて甘い香りの雪濃湯(ソルロタン)が
ここのところ疲れ気味だった身体に、ふわーっとしみこむ。
本当に美味しい料理は、おんなじように、心も元気にする。
・・・人間って、単純だ(笑。
ね、旨いもん食わなきゃダメだよ、と
テーブルの向こうでヤツが笑った。
狭っまいシングルサイズのソファーベッドで、
お互いを邪険に押しのけるようにしながら寝たせいで、
旅の疲れが取れなくったって、ぜんぜん構わない(笑。
よく眠れないまま、聖路加タワーの向こうの空が白むのを、
夢に見た気がする。
本日の距離:0km